2023年6月に新車で購入したDUCATO L3H2の紹介をしていこうと思います。私自身DUCATOを貨物自動車として使っているのでそういった目線での解説になっていますが、お仕事や趣味でお使いになる方や何かのベース車両としてご購入を検討している方の参考になれば幸いです。尚、私はコースター ビッグバン ロングからの乗り換えです。
前記事では基本構造について解説をしております。
今回はエンジン・トランスミッション編です。
エンジン解説
DUCATOに設定されているエンジンは歴史上幾多の種類が存在していましたが、そちらについては省略しまして今回は日本向け仕様に設定されている物のみ紹介します。
エンジン型式は「46348913」で、ステランティス N.V.製第 3 世代の2.2L MultiJet 3ディーゼルエンジンです。
スペック:
直列4気筒 ディーゼル インタークーラー付きVGターボエンジン(Euro 6 step E)
ボア×ストローク:83.8×99
排気量:2,184cc
圧縮比:15.7:1
最高出力:132kw(180馬力) 最大トルク:450N・m
尿素SCRを備えているためAdBlueが必要(20L/5,000km程度)
電動パワステ・アイドリングストップ・コモンレール式燃料噴射装置
エンジンはとても静かで、今時のヨーロッパ車という感じの音がしています。
トルク曲線、静音性、どれをとっても商用車としては贅沢すぎるほどの質であり、乗用車としても全く遜色ないエンジンだと思います。きっと静音性に関してはエンジンルーム周辺の遮音が効いているのもあるのでしょう。
ただ最大トルク発生回転数がごく低回転でピーキーなので、ゼロ発進時に”1速で加速し過ぎちゃう”ということが良く起きます。同じエンジンでも140馬力仕様、120馬力仕様はトルクカーブが穏やかなので、街乗りでしたら下のクラスのエンジンの方が乗りやすいのかな~と個人的には思いました。重い架装をした車両ならどっしりしていてそのような事も感じなくなるのかもしれませんけれども。
なので私は加速しすぎないよう、アクセルペダル操作に対しての加速がダルくなる「ECOモード」で走っています。但しエンジン始動の度にECOモードを選ばなければならないので、ちょっと面倒です。きっと足の感覚が研ぎ澄まされてきたらノーマルモードでも円滑に走れるようになるでしょう。
使用上の注意
新車から5,000~6,000km程度は慣らしが必要と説明書に明記されておりますので、それまでは車に優しい運転を心がけた方が良さそうです。これを怠るとエンジンオイル消費量が増えることにも繋がります。
また、今時のディーゼル車は無効噴射された軽油がエンジンオイルに混合してエンジンオイルの量が増えます。規定量を超えてしまうとエンジンオイル自体の性能が落ちるだけで無く、エンジン内部部品が直接オイルを叩いてしまって燃費が悪くなったり振動が出たり、最悪の場合エンジンが破損してしまったりします。
出発前には必ずインフォメーションディスプレイでオイルの量をチェックした方が良いでしょう。
あと、AdBlueの残量管理にも注意が必要です。
AdBlue残量がゼロになってしまうとエンジンを始動できなくなります。AdBlueを5L以上補充すると再始動が可能になりますので、緊急時用にAdBlueを車に積んでおくことも検討した方が良いかもしれません。(容器は要検討)
尚、AdBlue残量はメーターパネル内で随時確認が可能です。
エンジンメンテナンス上の注意
注意しなければならないのはエンジンオイルで、AdBlue付きDUCATOの場合はACEA C2規格が指定されておりますので交換する際は同一規格、又はC3規格のオイルを使用しなければなりません。(C5は使用不可)
C2とC3の違いは剪断安定性の違いで、C3の方がその値が高い物になっています。しかしその分抵抗になりますので燃費は悪くなります。式にすると
エンジン保護性能 C3>C2
省燃費性 C3<C2
という感じです。どちらのオイルを使用するか悩むところですが、現状日本国内で入手しやすいオイルはC3のようなのでしばらくはC3の安い物を探して使ってみようと思います。
オイル交換のサイクルは説明書に明記されておらず、「必要に応じて点検したタイミングで」程度にしか書かれていません。(^^;
スピードメーターのインフォメーション画面で「次のオイル交換はあと25,000km」のように出てくるのですが、日本国内では高温多湿、低速、短距離、高負荷が当たり前ですのでオイルには厳しい条件です。私は一般車のように3,000km~5,000km程度で交換をしていこうと思います。
尚、エンジンオイル必要量はオイルのみ交換時で5.4L、フィルター交換時で6.1Lとなっております。
トランスミッション解説
DUCATOのエンジンに組み合わされるトランスミッションはZF製9HPシリーズのトルクコンバーター式9速オートマチックトランスミッション(以後9A/T)で、どの速度域でも最適なエンジン回転数・エンジン負荷になるようコントロールされています。
並行輸入で入っていたDUCATOにはヘビーデューティー仕様の自動制御M/Tが使われていた物が多かったようですが、始動時の煩雑さや故障が多かったこともあってか日本国内向けはスタンダード仕様の9A/Tを採用したようです。
このトランスミッションは世界各国のホンダや日産、ジープ、ランドローバー等で採用されているトランスミッションということで実績もあるようです。故障についてはそれ程心配は無さそうですね。ATF交換は150,000 kmごとに交換するようZF社ウェブサイトに明記されていますので、それ以下で交換するように意識しておこうと思います。
乗っている際のフィーリングとして特に感じることは無いのですが、強いて言えば2点。
まず1つ目。停車すると燃費向上のためニュートラル制御が作動するのですが、ブレーキを離して自動的に1速に入る際に少しショックを感じるという点でしょうか。特にアイドリングストップをオフにしているとエンジンがかかったままになる為1速に入る際に内部の油圧が高く、余計にドンッと背中を押されるようなショックを感じます。アイドリングストップをオンのままにしておけば少し和らぐので標準状態で乗っていれば何てこと無いのですが、個人的にアイドリングストップが嫌いなためオフにしている自分にとっては少しストレスだったりします。が、この記事を書き始めた新車当時はショックが大きかったものの5,000km程走った現在はあまり気にならないレベルにまで収まりました。恐らくA/Tの慣らしが進んだものと思います。
そして2つ目。1速は要らないのでは?と感じるほどにハイギヤード(減速比が高い)です。2速発進で十分な気がするので、トラックのように平地や軽積載時用に2速発進モード等があると嬉しいなと思いました。
エンジンとトランスミッションの相性は?
エンジン・9A/T併せての評価としては、良い相性だと思っています。
変速ショックはありませんし減速時もブリッピング(回転数合わせ)してくれるソフトウェアが組まれており、加減速いずれも快適です。減速時も積極的なシフトダウンを行ってくれることで減速時フューエルカットを多用し燃費の向上を図っているだけでなく、再加速時に最適なギヤを選択していることでモタつきの無い再加速が可能です。
燃費は?
私の場合は常に荷物を300~500kg載せっぱなしの状態なのに燃費も良い方だと思います。(今は夏でA/Cずっとオンですが13km/Lは切らないです)
およそ総走行距離3,000kmを超えるまではエンジンコンピューターが学習中ということで実燃費が定まらないようですが、もう少し走って数値が固まってきたら改めて書こうと思います。
妙な故障が起きないといいのですが、これからが色んな意味で楽しみです。